アクリル絵具は、工業用ペイントから発達した絵画用の絵具です。
アクリル樹脂という極めて安定性の高い樹脂が開発されるここにより、水溶性で乾燥が早く、耐久性の強い絵具が作られるようになりました。
現在のアクリル絵具の中には、次のような原料が含まれています。

分類
構成要素
役割り
構成成分
顕色材
顔料
色を出す
無機顔料、有機顔料
白色顔料 注1
隠蔽性付与、均一塗布
チタニウムホワイト、ジンクホワイトなど
体質顔料
顕色補助(分離防止・濃度調節)
炭酸カルシウム、硫酸バリウム
展色材
定着剤
糊材(色を固定し膜をつくる)
アクリルエマルジョン
分散剤
安定化(顔料と展色材をなじませる)
界面活性剤 など
湿潤剤
水との相性向上、乾燥性調節
グリセリン、界面活性剤など
増粘剤
絵具状態の安定
界面活性剤 など
防腐・防黴剤
長期保存、黴発生の防止
 
PH調整剤
PH調整による絵具の安定化
 
その他安定剤
消泡剤、凍結防止剤など、
界面活性剤、グリコールエーテル
 
練り合わせ溶剤として
 


■顔料(がんりょう)
顔料については、油絵具の項目を参照。

油絵具との違いは、水彩同様、水との安定性の悪い顔料は、油絵具にあって水彩絵具にない色があることです。
特に、コバルト系、カドミウム系などの金属を含む主要顔料がアクリル絵具では安定性が悪く使えないことが特徴的です。色味だけ合わせた別顔料のものに「コバルトブルー」などという表記がなされる場合もあります。
また、体質顔料が他の種類の絵具に比べて多く使われるのも特長のひとつでしょう。これらは、絵具自体の安定性のために必須です。したがって、発色は「アクリル」独特の明るく軽いポップなものになりやすくなります。

注1:白色顔料は、アクリル絵具でも「デザイナーズガッシュ」のようなデザイン向けの絵具に添加されることがあります。通常のアクリル絵具には含まれない成分です。

■ビヒクル(展色剤)
アクリル絵具では、アクリルの高分子が水に分散した形の「アクリルエマルジョン」が糊着材として使われます。エマルジョンという点や乾燥後に耐水性になるといった性質はテンペラ絵具に似ています。
アクリルエマルジョンは樹脂濃度の割りに比較的さらさらしているので増粘剤が添加され練りが調節されます。水彩同様、樹脂濃度が高いビヒクルでは、顔料は完全に膜に包まれ深い濡れ色に発色し、ガム濃度が低いとガッシュのように艶がなく不透明で明るい発色を示します。後者を特に「アクリルガッシュ」と呼びます。
顔料にたいするビヒクル比率は、他の絵具に増して多くなっています。

■補助材料
工業製品たるアクリルエマルジョンは、上表のように他にも多くの補助材料が添加され、さしずめ「化学の絵具」の感があります。油絵具や水彩絵具に比べて、絵具としての色合いに不満を感じやすいのはこれらの材料が極めて多く添加されているためと考えられます。


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